O weh! Welch eine Sorge
In Grabes dunkle Weite
Furcht vor Jenseitsleben
Schenkt mir doch kein Sterben
ドイツ語詩です。口語に訳してみるとこんな感じです。
嗚呼,なんという憂鬱だ
墓の暗い闇の向こうに行っても
彼岸の世界を恐ろしく思うあまり
私に死すら齎してくれない。
実は茅野蕭々が明治40年4月に発表した「苦悩」という詩の最後の連だけ独訳してみました。
慶應義塾大学初代独文科教授の茅野蕭々(1883-1946, 本名は儀太郎)は,一高在学中から与謝野鉄幹の新詩社に出入りして俳句を詠んでいました。そこで鉄幹の寵愛する女流三俳人のひとり,3歳年上の増田雅子に熱烈プロポーズ。ちょうど鉄幹への恋心を断念した雅子を妻にしました。
鉄幹は与謝野晶子,山川登美子,増田雅子の三人を寵愛しましたが,三人とも鉄幹に愛された女性でした。その結果三角関係ならぬ四角関係のような状態だったのですが,鉄幹が晶子を妻に選んだことで,山川登美子は傷心を抱いたまま他の男性との結婚し,俳句界を去りました。雅子は失恋のまま日本女子大の学生を続けていました。儀太郎はその雅子に恋をして雅子の大学卒業と同時に彼は学生の身分で結婚したのです。
元の詩はコレです。とても熱烈プロポーズして叶った雅子との結婚3ヶ月前の作品とは思えませんね。暗い。
あゝ、くるし、このなやましさ、
おくつきの暗きかなたの、
後の世も續くをおそれ、
もとめ得ず、あはれ死さへも。
蕭々の詩は自由詩になってますが、拙訳の独訳は強弱格の三歩格で合わせようと試みました。
O weh! Welch eine Sorge
|X X | X X X | X X|
In Grabes dunkle Weite
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Furcht vor Jenseitsleben
|X X | X X | X X|
Schenkt mir doch kein Sterben
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