MEMENTO MORI AT CARPE DIEM

ποιέω καί ἑρμηνεύω

気遣ひ

キミの指が麗艶に魅せる

その緑玉のこと語らふか?

多くは言葉が要るものだが,

しばし黙すが良い時もある。

 

かう言ふことだ,石の色は

緑碧で眼(まなこ)を素早く回復させる!

でも黙するのだ,苦しみと痛みが

同時に伴うことを。

 

ところで,キミはなぜか知りたいはずだ

キミにそんな力がある理由を!

緑玉の力が眼を回復できるやうに

キミそのものがリスキーなのだよ。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Goetheイスラームの詩人を真似て『西東詩集』を編んだ。
そこでは12の巻に分かれて詩がちりばめられている。以前 Memento mori at Carpe diem で挙げた「死して成れ,は本当はこうだ!」にある詩も『西東詩集』詩人の巻からの有名な詩だ。

Goetheイスラームの詩人 Hafez (1325-1389)のペルシア語の詩を読んで感激して『西東詩集』を書いた。
残念ながら彼は Hefez が尊敬したペルシアの大詩人 Omar Khayyám(1048-1131)を知らなかったし,有名な『ルバイヤート』も知らなかった。
しかし彼の直感は西洋にはない,Hafez の詩の巧な比喩表現に目を見張ったものと思われる。Hafez の Diwan の主要テーマは恋愛である。

そしてHafez に影響を受けたゲーテのコレも愛の歌である。愛というか、duの存在を恰もfamme fatale の様に賛美しながらも危険視する、恋の駆け引きの詩というべきか。
この時期(1814-15) Goetheは65歳。旅行中に滞在した Willemer の家。そこで世話をしてくれた彼にとっては年齢の半分にも満たない30歳の人妻 Marianne von Willemer に友情とも愛情ともつかない恋をしていた。『西東詩集』は全体的にこの Goethe と Marianne の親しい関係を愛に昇華したものと考えて良いと思う。即ち du (君)とは大方 Marianne のことを指す。

件の詩においてGoetheはエメラルドとそれを身につけている女性(du) を比較している。エメラルドの緑は古来からプラスの意味とマイナスの意味を持つ。その二律背反を彼は詩に上手く利用した。Goetheはdu の魅力的な指に着用させているエメラルド(Smaragd)は“Smaragde“ と複数形になっている。つまり指に装着されたエメラルドの石は1個ではないのだ。大粒のエメラルドのついた指輪をいくつも嵌めているかもしれぬし、または1つの指輪に複数のエメラルドが散りばめられたものかも知れぬ。

また亀裂が多く脆いエメラルド用の特別なカット、エメラルドカットは1500年代からあるそうだ。勿論Goethe の脳裏にあるエメラルドはそのカットによるものだろう。良質のエメラルドをわざわざ楕円形のカボションカットにはしない。

 

65歳のGoethe には49歳の内縁の妻 Christiane がいた。彼女は1816年に51歳で亡くなっているが、尿毒症を患い長い闘病生活にあった。彼が Willemer 夫人と出会った時、Christiane は病中だった。現代人にとっては単なる不倫に見える恋も、当時は貴族の結婚は子孫繁栄と家の安泰のためであり、恋愛とはかけ離れている。そんな貴族の夫人が「愛情」を傾けたがる異性との出会いに心ときめくのは当時ならではの事かもしれない。ただ, Goethe  は恋愛結婚をしたのだから,病中であったとしても Christiane を差し置いて他の女性に熱をあげるのは不謹慎。だからこそ Goethe は恋愛とも友情ともつかない関係に陥ったのかもしれない。

 

原詩は以下の通り

Soll ich von Smaragden reden,
Die dein Finger niedlich zeigt?
Manchmal ist ein Wort von nöten,
Oft ist’s besser, daß man schweigt.


Also sag ich, daß die Farbe

Grün und augerquicklich sei!
Sage nicht, daß Schmerz und Narbe
Zu befürchten nah dabei!”


Immerhin! du magst es lesen!

Warum übst du solche Macht!
»So gefährlich ist dein Wesen
Als erquicklich der Smaragd.«

 

上記の原詩をChatGPTに読ませて、イメージした写実的な絵画を書かせてみた。

最初にこれを描いてくれたが、 Smaragd は高級であればカボションカットではないはずだ、Goethe時代にはもうエメラルドカットあったから修正させた。

おまけに femme fatale なテイストでお願いしたらこんなの描いてくれました。
こういうモデルさんいそうですよね。