MEMENTO MORI AT CARPE DIEM

ποιέω καί ἑρμηνεύω

君知るやかの国を(ミニヨンの歌より)

Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn,

Im dunkeln Laub die Gold-Orangen glühn,

Ein sanfter Wind vom blauen Himmel weht,

Die Myrte still und hoch der Lorbeer steht ?

Kennst du es wohl ?

Dahin! dahin

Möcht ich mit dir, o mein Geliebter, ziehn.

ˉˉˉˉˉ|

この詩は『ウィルヘルム・マイスターの修行時代』に登場するミニヨンが最初に歌う歌。
格五歩格はシェイクスピアが盛んに使い、またミルトンは『失楽園』に、ダンテ、ペトラルカも使用した。
赤い母音が強格の部分。二音節以上の植物の単語,例えば Zitronen, Orangen, Myrte, Lorbeerをうまく選んでリズムを整えている。
3行目のblauは変化語尾-enを省略しないことで vom blau-en Him-mel wehtと弱強格を守る。
最終行のziehenと言う動詞は自動詞だと引っ越す,移り住むの意味がある。ここではミニヨンがかの国,イタリアへ一緒に行って暮らしたい,という願いを込めて歌っているので,単に「あなたと行きたい」ではない。「あなたと行ってそこで暮らしたい」なので,文語では平凡な「移」ではなく「遷」という漢字で,口語では「住みたい」という動詞で表現した。

 

(文語拙訳)
君知るやかの国を,檸檬花咲くかの国を,
色濃き葉陰に橙(だいだい)輝く
風ひとつ天(あめ)より凪(な)ぐかの国を。
銀梅花(ミルテ)密やか,月桂樹(ロリエ)聳ゆか?
君知るや,よく知るや?
彼の国ヘ,彼の国へ
愛(いと)しき汝(なれ)と,我遷(うつ)りてむ。

 

文語拙訳は五七調でリズム整えた。弱強の押韻は赤の語頭音を強とした。
最終行のみ,「なれ」に呼応して「われ」を出してみた。ここだけ弱強をずらした。
つまり音読時に「われ」のあと一息入れるように読む。
「きみるや(5) かのにを(5) れもんく(5) かのにを(5)」
「いろこきかげに(8) だいだいがやく(8)」
「かぜとつ(5) あめよりなぐ(6) かのにを(5)」
「みるてそやか(7) ろりえびゆか(7)」
「きみるや(5) よくるや(5)」
「かのにへ(5) かのにへ(5)」
「いとしきれと(7) れうつりてむ(7)」

 

口語拙訳はストレートな意味伝達を目指した。

(口語拙訳)
ご存知かしら、レモンの花咲き、
深緑の間から黄金のようなオレンジが光る、
青空からやさしい風が届くあの土地を。
ミルテは音もたてずに、ロリエは見上げるように茂っているのかしら?
あなたはご存知、本当に?
あの場所へ、あの場所へ
愛しいあなたと私は住みたい。