Erinnerung an einen Musikliebenden
Von Musik du immer ernst,
Kompromisslos und am strikt’sten,
Wie der Musiker, den du achtest.
Echten tiefen Klang du magst.
音楽を愛した貴君を偲んで
音楽について貴君はいつも真剣
妥協を知らず,最も厳しかった
貴君が尊ぶかの音楽家の如くに。
真の深き響を貴君は求めた。
2023年9月20日夜,指揮者,作曲家,音楽学者の野口剛夫氏が急逝された。享年58歳の短い生涯だった。9月23日突然死去のメールをいただいて,正直驚いた。
彼はフルトヴェングラーを敬愛,というより畏敬の念で研究されていた。烏滸がましくも私は彼の主催する東京フルトヴェングラー研究会の雑誌に数回寄稿させていただいた事がある。また,フルトヴェングラー関係の彼の翻訳で多少相談を受けた事があった。
野口氏は正直,頑固,筋が通らない事は大嫌いな方だったと思う。佐村河内事件が発覚する前にゴーストライター説を唱えて,突如マスコミの寵児となった事もあったが,彼にとってはそんな事よりフルトヴェングラーの音楽思想を少しでも追体験出来るよう理解することの方が余程重要だった筈だ。
日本では指揮者としてのみ著名なフルトヴェングラーだが,本人は作曲家が天職だと思っていた。その交響曲は第2番のみ朝比奈隆大阪フィルで演奏されたが,野口氏は手兵のアマチュアオーケストラを鍛えに鍛えて畢生の大作,交響曲第3番の日本初演を果たした。
めげない,妥協しない意志の強さで果たした金字塔だった。
思いもしなかった野口剛夫氏の急逝,敬意を表して改めて冥福を祈りたいと思う。
安らかに,されど妥協せずに彼岸で冥界のオーケストラを演奏していただきたい。